知って得するミニ知識
このコーナーは、メールマガジンに掲載しています「ワンポイント・メモ」や「一口メモ」をまとめたものです。
順次、内容を充実していきたいと思いますが、何かのご参考になれば幸いです。
時計の錆びについて
腕時計に限らず、肌と接する事が多い物は汗や汚れの影響で錆びやすい環境にある事は、改めて説明するまでもありませんが、時計が錆びることには気がつかない方も多いようです。
特に、ステンレス製のケースやバンドの時計は錆びないと思っておられる傾向が強いですが、実際には使用条件によって錆びる事があります。
ステンレス・スチール(SS)は、鉄やクローム、ニッケルを含む合金ですが、空気と接すると表面にきわめて薄い被膜が出来ることで錆を防いでいます。
この被膜は、常に酸素に触れている事で維持されるもので、汚れなどによって酸素が不足する状態では、被膜が破壊されて錆びる事になるわけです。
新品の時計には、裏側に販売時のスリ傷を防ぐ意味で保護シール〈分かりやすくする意味で着色されたシールが多く使われています。〉が張られていますが、これを張ったままで使用する事は、錆びを防ぐ意味からは良くありません。
また、意外と多いのがケースと裏ぶたの密着部分の錆です。
ケース構造が押し込み式で、接合面が若干甘い場合、パッキンで接している部分の周りに汚れが溜り、そこが腐食して、微小な窪みがいくつも出来ている事を見かけた事もあります。
その他、時計バンドのコマの接合部が錆びて切れるケースもあり、主にピン接合構造になっているバンドでは発生しやすいようです。
ピン接合のバンドでは、ピンを留めているパイプが腐食してコマ切れを起こす事もありますが、問題なのはコマの取り外し出来ない個所で切れた場合で、バンド全体の交換になってしまうケースも多々あります。
錆びとは違いますが、割ピンで接合されている場合で、時計全体の重量に比べてピンの径が細い場合には、割ピンが折れてコマ外れというケースもありますので、そういうバンドの付いた時計は避けたいところです。
発売時には割ピン構造だったものが、割れが多発してパイプを使用したピン接合に仕様変更になった時計も実はありますけどね。
ステンレス以外のメッキ製品では、メッキ剥がれや摩耗から下地が露出すると一気に腐食する事が多く、ポロポロのケースも時々見かけます。
腐食の進行程度は個人差が大きく、体質なのか汗の量や成分なのかは判りませんが、メッキ製品だと数年でボロボロになってしまう方もあります。
こういった錆や腐食の進行を食い止めるには、やはり表面を清潔に保つ事が肝心で、使用後は柔らかい布などで拭くことが何よりです。
ケースとバンドの接合部や、バンドの内側の汚れはバンドを外して全体を洗浄する方が良いですが、ケースと一体構造になっていたり、外しにくい構造になっている場合には、時計店でムーブメントを外して、全体洗浄という事になると思います。
但し、ガラスに色や文字がプリントされている場合や、デジタルウォッチによく見られるように、ガラスを外さないと文字板が取れない場合には、ケースごと洗浄器に入れる訳にはいきませんから、難しいところです。
最近は、樹脂枠に金属メッキをしたケースもありますが、これは耐久性に劣るような感じです。
この他に錆びて困るのは、裏ぶたをネジで留めた構造になった時計で、ネジが錆びついているために、電池交換などの際に折れ込んでしまい、ケース修理という事もあります。
比較的安価な時計だけでなく、超高級時計でもネジ留め構造になっているケースがありますが、個人的には防水時計はネジ留めでなく、スクリューバックのような全体がネジになった構造にして欲しいと思っています。
樹脂側の時計でも、汚れでネジが密着してしまい、ネジを回すと樹脂の一部が一緒に剥がれる事がありますが、そうなるとネジを戻しても締めつけが甘くなり、防水が効かなくなる事もあります。
まあ何はともあれ、時計は「使ったら拭く」のが一番なんですけど、電池交換や修理の際に時計バンドを洗うと、洗浄漕が真っ黒というのは、性別や年齢に関係なく珍しくないですね。
1969年に誕生したのクオーツ・ウォッチ
今、時計といえばクオーツ・ウォッチが当たり前、機械式は限られた分野だけという時代になっていますが、ウォッチとしての歴史は1969年からです。
クオーツは、人工水晶を振動子に用いて、そこから発生する振動を標準信号として利用しているもので、1880年にフランスのピエール・キュリー(有名なキュリー夫人の夫)が、水晶片に圧力を加えると電気が発生する事を発見したことから始まっています。
その後、1927年には、アメリカのマリソンが水晶時計を試作していますが、何百本もの真空管を必要としたため、初期のコンピュータと同様に安定し動かす事が難しい代物でした。
コンピュータと同様に、クオーツウォッチが誕生するまでには、周辺技術の進歩があったからですが、日本では1958年にセイコーが放送局用の水晶時計を商品化、また1964年の東京オリンピックには卓上型クオーツクロックが使用されましたが、ウォッチが出来るまでにはさらに数年の歳月が必要でした。
いずれも日本のセイコーが先陣を切ったのですが、1966年に懐中時計型の試作品をスイス・ニューシャテル天文台の精度コンクールに出品、翌67年には世界で初めて掛時計を商品化、そして1969年に発売した「35SQクオーツ」が世界初のクオーツ・ウォッチとなりました。
また、最初に登場した掛時計では水晶振動子の振動数が 156ヘルツというものでしたが、35SQでは8,192ヘルツ(その後、16,384ヘルツに変更)と向上し、現在は32,768ヘルツ(32K)が主流です。
一部の年差時計では 196Kヘルツの振動数を採用していますし、クロックでは4Mzが主流ですが、振動数だけを上げれば精度が向上する訳ではありませんので副水晶体振動子を搭載させたり(セイコーではツインクオーツの名称で商品化)温度補正回路を組み込んだりするような、様々な技術の発展が精度の向上に貢献しています。
ちなみに、現在セイコーで最高精度を誇る「グランドセイコー(GS)」でも振動数は32Kなのです。(GSで採用の9F系、8J系、4J系キャリバーの全部)
初期のクオーツには色々な試行錯誤があり、クロックではメカ部分はテンプ式電池時計のままで回路部分だけに水晶振動子を用いた物があったり、駆動部のステップモーターに多極構造を使用した物もありました。
クオーツの誕生で、ちょうどコンピュータの普及で世界のシステムが一変したのと同じような事が時計の世界では起こった訳ですが、これからさらにもっと面白く興味のある物に変化して欲しいと思います。
腕時計のパッキン
腕時計には、気密性を保つために、いくつかの箇所にパッキンが使われている事はご存じだと思います。
列挙すると、ガラスパッキン、ガラス縁とケースが別構造であればガラス縁パッキン、リューズパッキン、プッシュボタンがあればボタンパッキン、それに裏ぶたパッキンです。
パッキンと密接な関係があるケース構造については、今回は省略しますが、ひと口にパッキンと言っても素材や様々な形状があります。
主に使われているのはゴムを主原料としたパッキンで、弾性に富むために可動部分に向いており、リューズパッキンやボタンパッキンは、ほぼこの素材です。
裏ぶたにも使われていますが、ケース構造によって硬さの異なる種類や形状があります。角形ケースの一部や、デジタルウォッチに多いねじ止め式の裏ぶたでは、溝の形状に合わせた整形したパッキンを使用します。
裏ぶたに使われるパッキンには、プラスチック素材の物もあります。スイス製ウォッチで、押さえ込み構造(注)のケースではこちらが一般的です。
【注】正確には、本体との食い付きの方法でいくつかの方式に分かれてます。プラスチックパッキンを使った物は、プラ直結式と呼んでいるメーカーもあります。
随分昔のオメガの裏ぶたパッキンには、何故か柔らかいゴム系の素材が使われており、フタを開けるとパッキンが溶けている事が普通だった時代がありましたが、今はそういう素材は使用していません。
また、昔は非防水構造の時計で透明なシリコンパッキンを採用していた物もありましたが、現在はありません。
ゴム系のパッキンには、気密性と劣化を押さえる意味でシリコン・グリスを塗布して納めますが、プラスチックパッキンでは性質が違うために行いません。
ガラスパッキンやガラス縁パッキンは、通常では開閉する事がありませんので気密性が保ちやすいプラスチックパッキンが主に使われています。
以前の防水時計には、必ずガラスパッキンが使用されていましたが、最近の10気圧防水程度の薄型時計では、接着剤が改良されてお陰で、ガラスを直に接着してある構造が主流です。使われているのは主に紫外線硬化型の接着剤ですが。
水や汚れが侵入するケースは、殆どがパッキンの不良、もしくは正しく所定の位置に収まっていない事が原因ですが、ケース構造とも関係しますので、全てをパッキンのせいには出来ません。
要は、元々防水構造が甘いケースでは過信が出来ないという事です。例え、強化防水を謳っている商品であっても、です。
私見ですが、薄型構造の物はパッキンの劣化がてきめんに防水性能に出ますし、急激な加圧に比べて、じわじわ侵入する汗のような物に弱い感じがします。
また、安価な時計で申し訳程度にパッキンが入っている物もありますが、こういう物に限って裏ぶたを開けた時点で切れてしまう事が多いのも困りものです。
なお、提時計の場合は、肌に密着する事がありませんから、裏ぶたパッキンは使用していない事が普通です。
「エンハンスメント」と「トリートメント」
上の二つの言葉をご存じでしょうか?
「トリートメント」と言っても、シャンプーの事ではありません。実は、宝石に行われている処理の用語です。
宝石は、原石をカットや研磨して出来上がっていると思われがちですが、これ以外に色や外観を変えるために様々な人工的手段が加えられる事があります。
しかし、このように加工は商品価値を大幅に左右しますので、広く情報開示する事が求められていると思います。
「エンハンスメント」は改良という意味で、宝石が持っている潜在的な要素を引き出す加工です。つまり、要素の無い宝石には効果が無い加工で、それゆえに広く容認され、価値的評価にはあまり影響していません。
具体的には下記のようなのがあり、列挙した宝石で現在流通している物には、ほとんど施されていると言っても過言ではないと思います。
- 「加熱」
- ルビー、サファイア、アクアマリン、ゾイサイト、トルマリンなど
- 「含浸(無色材)」
- エメラルド、ジェダイト(ひすい輝石)
- 充填(無色材)
- さんご
含浸や充填は、後述する「トリートメント」の範疇に入るものですが、古くから慣例的に行われてい為に、無色材を使ったものは「エンハンスメント」に加える事になっています。
「トリートメント」は改変という意味で、本来持っている要素とは違う物を付加する加工です。当然、評価に大きな影響を与えますし、販売する時点で区別する必要はあります。但し、処理の内容によっては判断できない加工もありますので、この辺が現在の課題かも知れません。
具体的には下記のようなものがあります。
- 「着色」
- オパール、ジェダイト、さんご、真珠、トルコ石、ラピスラジェリ等
- 「コーティング」
- ダイヤモンド、エメラルド
- 「表面拡散」
- サファイヤ、ルビー
- 「放射線照射」
- ダイヤモンド、真珠、ベリル、トパーズ、トルマリン
- 「含浸」
- エメラルド、ルビー、サファイア、オパール、ジェダイト、トルコ石
- 「充填」
- ルビー、サファイア、エメラルド
- 「加熱」
- オパール、ジルコン
これらの加工は、店頭で判断するには難しい面がありますので、厳密な調査は専門の鑑定会社に出す必要があります。
大切なのは、トリートメントだから駄目とか言う事ではなく、宝石に施されている加工の中身を知って頂き、その上で楽しんで頂きたい事です。
現在の風潮は価格重視というか、見た目の価格にとらわれがちです。
ある方のダイヤモンドとグレーディング・レポート〔鑑定書〕を拝見した事がありますが、1.05カラットあっても色は「N」〔「D」が最高で後はアルファベット順〕、クラリティは「I2」〔「FL」が最高で後は「VVS1」「VVS2」「VS1」「VS2」「S1」「S2」「I1」と続きます〕、カットは「GOODと」記載してあっても、ガードル〔側面部分〕が異様に厚い感じという、ちょっと言葉にならない代物でした。
普通のお店なら扱わない〔扱いたくない〕クラスなのですが、頂いた物のようで贈られた方は、値打ちだったと思われているようでした。
売る側の良心を疑ってしまう品でしたが、極端なお買い得や値打ち話、最近ではアポイントメント商法による強引な販売もありますが、そのような話には充分気をつけて頂きたいと思います。
真珠あれこれ
日本を代表する宝石とも言える真珠ですが、これは日本が初めて養殖真珠の生産に成功したからで、日本だけで取れるという訳ではありません。
養殖真珠の生みの親というと、御木本幸吉氏という名前が出てくる方がほとんどだと思いますが、1986年(明治29年)に出願した特許により半形真珠が生まれたのが第一号で、球状の真珠が生まれたのはその十数年後です。
真珠というと、貝の中に異物が入って、その周りを貝が真珠層で覆うと思われがちですが、実はそうではありません。
実は、貝殻の内側に密着すると共に貝自体を覆っている外套膜という組織が何かの都合で脱落すると、その組織が体内から栄養を貰って成長して、袋状の組織を作る性質を利用しているのです。
ですから、養殖真珠の生産作業で、貝の口を開けて玉のような物を入れてい光景をテレビなどで見られた事があると思いますが、実はメスで表面の一部を切って生殖層まで道を作り、そこに核になる玉と、ピースと呼ばれる外套膜の一部を核に密着させて置いているのです。
こうして、体内でピースが成長し、やがて核全体を覆うことで真珠が出来上が訳ですが、核が無くてもピースは成長しますので、この場合には核のない真珠を作る事も出来る訳です。
さて、真珠は養殖に使われる母貝(ぼがい)の種類によって「アコヤ真珠(アコヤガイ)」「黒蝶真珠(クロチョウガイ)」「白蝶真珠(シロチョウガイ)」「マベ真珠(マベ)」「淡水真珠(イケチョウガイ)」に分けられます。
上記の名称は、日本真珠振興会が正式な呼称として提唱しているものですが、残念ながら長い間の商習慣から、様々な呼称が使われているのが現状です。
例えば、通信販売等で良く見かける「本真珠」という呼称ですが、模造品と比較する事から由来しているものの、本物であれば単に真珠と呼べば良い事ですから、紛らわしい表現だと思います。
紛らわしい表現というと模造真珠を忘れてはいけませんが、基本的には表面に合成真珠箔と呼ばれる塗料を塗布したもので、100倍の顕微鏡で表面を観察すれば簡単に判りますが、プロならそこまでしなくても簡単に判別は出来るはずです。
安価な物は核にプラスチックを使い、少し高いものであれば貝を核に使い、「貝パール」という呼称や、どこかヨーロッパの島々の名前を付けて販売している物もありますが、偽物である点には変わりありません。
さて、真珠は外套膜が袋状の組織を作る性質を利用していると紹介しましたが、こうやって出来た真珠層は、ミクロ的に見ると、炭酸カルシウムのブロックを、たんぱく質の接着剤を使って積み上げたような構造になっています。
この炭酸カルシウムの小さな結晶〔0.4から0.6ミクロンの厚みですが〕は、ほぼ透明に近いのですが、何千枚と積み重なる事で光の干渉現象を起こし、これが真珠独特の輝きと色彩を生む原因になっています。
また、たんぱく質の接着剤という表現をしましたが、このたんぱく質も色をもっていて、貝によって異なります。
この色は、実体色と呼びますが、黒蝶真珠のブラックや、アコヤ真珠のゴールドなどの色は全てこの実体色に起因するものです。
また、真珠層と中の核との境界部分には、しばしば真珠層とは違う層が存在する事があり、この層の色が透けて見えるのですが、これを下地色と言います。
こうして、干渉色、実体色、下地色という三つの質の違う色がひとつの真珠に存在する事で、複雑な色合いを生み出している訳です。
真珠の色については、人工的な処理で色付けされた場合もあり、古くは化学反応を利用する方法や、放射線照射による方法、最近では染料を真珠層表層部に浸透させて着色する方法もあります。
これ以外に表面をコーティングして光沢を向上させる方法もありますが、日本の業界では自粛事項になっています。
色の処理の正確な判別方法は器具を必要とするので、今回は説明を省かせて頂きますが、最初にご説明しましたように真珠は炭酸カルシウムで覆われていますので、日ごろの手入れが不可欠な宝石です。
表面に付いた汗や油などの汚れが、結晶を溶かして光沢鈍化を引き起こしますから、少なくとも汗や油が付いたら直ぐに拭き取る事と、使用後も必ず拭いて、水分や油脂分を残さないようにする事が肝心です。
また、紫外線に長時間さらさない、極端な乾燥状態や逆に湿った状態に置かない事も、長期間の保存の点では重要です。
腕時計のガラスあれこれ
腕時計に使用されているガラスには、通称「風防ガラス」と呼ばれるアクリル素材のもの、普通の無機ガラスと、それを強化処理した"ハードレックス"と呼ばれるもの〈※メーカーによって呼び方は異なります〉、そして合成サファイア素材などがあります。
「風防」とは、アクリル素材が航空機のガラスとして使用された事から付いた通称です。無機ガラスに比べて破損しにくく取り扱いが楽なから、日本では第二次世界大戦後以降の主流素材として使用されてきました。
また、ガラス自体を締め付けてケースに取り付けられる事から、防水用としも用いられ、例えばロレックス・オイスターでも最近まで風防を使用していました。〔現在はサファイヤガラスに移行しています。〕
傷が付きやすいのが難点ですが、浅い傷は研磨して消す事が出来ます。最もそれだけ生地を削る訳ですから、あまり何度も出来るものではありません。
普通の無機ガラスは、今では安価な時計に用いられている程度で、平面の生地は今でも販売されているものの、昔の時計に使用されているカーブした生地は段々と入手が難しくなってきています。
アンティック関係のお店では昔の部品を集めてストックしている所もあるようですが。
ハードレックスは強化ガラスとも呼ばれますが、化学処理して強度を持たせたもので、時計用ガラスとしては一番一般的な素材です。
サファイアガラスは、傷が付きにくい事や大量生産が可能になった事から、今では多くの時計に使われていますが、加工が難しい事から、カット形状の物や変形物はかなり高価になってしまうのが難点です。
例えば、輸入時計の中には、カーブして内側に模様がプリントされた上に、ケースとの取り付け金具も接着して一体化してある部品がありますが、これなどは部品価格は本体価格の1/3にもなってしまいます。
また、硬度が高い分だけもろい性質がありますから、あまりに薄いサファイヤガラスではかえって割れやすいですし、そのままで通常のハードレックスのように、ケースに直接押し込む方法による取り付け構造は使えません。
この点を解決するために、サフレックスと呼ばれるサファイヤとハードレックスの張り合わせ構造になったガラスも時計によっては使用されています。
最近では、防水時計にもサファイヤガラスが広く使われるようになりましたが、これには良い接着剤が出来るようになった事と関連しています。
ガラスとケースの取り付け構造は、今は接着がほとんどですが、ダイバーのような強化防水物では圧入式になっていたり、ベゼルで挟み込む構造になっていたりします。
風防ガラスの場合は、絞り込みによる取り付け構造のものもあり、これには専用の締め付け工具が必要な上に技術が必要ですし、亀裂や深い傷がある場合には締め付け時に破損しますので、部品交換が必要です。
ワンピース構造のケースでは、ガラスを外してからムーブメントを取り出しますので、この場合が一番厄介ですね。
腕時計の耐磁性能について
様々なメーカーから耐磁性能を謳った時計が出ていますが、この性能については日本工業規格(JIS)で基準が定められています。
- JIS耐磁時計分類
- 「1種」
- 日常生活において、磁界が発生する機器に「5cm」まで近づけてもほとんどの場合、性能を維持できる耐磁性保証水準。(JIS規格及びISO規格)
- 耐磁性保証水準は、直流磁界で4800A/m〔60ガウス〕、交流磁界(参考値)で1600A/m〔20ガウス〕
- 「2種」
- 日常生活において、磁界が発生する機器に「1cm」まで近づけてもほとんどの場合、性能を維持できる耐磁性保証水準。(JIS規格のみ規定)
- 耐磁性保証水準は、直流磁界で16000A/m〔200ガウス〕、交流磁界(参考値)で4800A/m〔60ガウス〕
磁気の影響を受けるのは、アナログ式の時計だけですが、機械式時計の場合には、クオーツほど顕著な事はなく、余程強い磁界で影響を受たりしないと、故障として見つかる事はないと思います。
これは、クオーツの場合にはステップモーターという永久磁石を持った車が電磁石の作用で駆動しているためで、他に強い磁界があるとそれに影響されてしまうからです。
現実的には、部品が磁化(着磁)されてステップローターの動きが重くなり、電池が早くなくなるなどの消費電流量異常で分かる場合がほとんどで、男性より女性の方が多い感じです。これは、女性の方が身の回りに磁気を使った製品が多いと考えるより、使用状態の違いがあるからかも知れません。
実際の製品では耐磁性能を高めるために、裏ぶたの内側や内部に純鉄を使用したシールドを設けていますが、文字板側は特にシールドを設けていません。
これは、磁界の強さは、磁気を発する製品からの距離の二乗に反比例するために、ムーブメントに近い裏側に比べてると、表側は離れているためです。
磁化されても、故障として判るまで時間が経過している事がほとんどですから、原因が判らない事がほとんどですが、今は磁気を利用した製品が身の回りには多くありますから、耐磁性能が低い時計では気をつけるに越したことはありません。
もっとも、使い捨てに近いムーブメントの中には、ほとんどの部品がプラスチック化されているために部品が磁化されにくい物があるのは皮肉ですね。
プラスチックレンズのコート剥げについて
現在、ほとんどのメガネではレンズ素材としてプラスチックが使用されています。これは、様々な新素材の開発の結果、ガラスと比べて遜色のない製品が出来るようになった結果で、重量や安全性の面で支持されています。
こんなプラスチックレンズですが、時々表面のコーティングが剥がれたようになっているメガネをたまに見かける事があります。
プラスチック素材はそのままでは耐久性が劣るために、一般的なレンズではハードコーティングと呼ばれる表面硬化コーティングが施されており、それ以外にも表面反射を防止する反射防止コート、加工中の水跡が残るの防ぐ水焼け防止コート、衝撃による破損の軽減を目的とした衝撃吸収コート、有害な紫外線を防ぐ紫外線防止コートなど、標準またはオプションで様々な表面加工が施されています。
コート剥げが起ってもミクロン単位の世界ですから、レンズの度数が変わってしまうことはありませんが、表面の光の反射状態が変わりますから、程度によってはあまり見栄えの良いものではありません。
コート剥げが起こる要因としては様々な要因があり、特定する事は難しいのですが、一般的な注意事項としては、クリーナーを使用して汚れを落とした後は水洗いしてクリーナー分を充分拭き取る事が大切です。
もちろん、洗剤などが付着した時には、速やかに水で充分洗い落とす事も大事です。コート剥げとは違いますが、水分が残って濡れたままにしておくと、水焼けを起こす可能性もありますから、拭き取りも大切です。
日常的に使うねのですから、いちいち取り扱いに注意をはらう事は難しいですが、コート剥げのような事も起こるという事を知っていただきたいと思います。
「ボタン電池の形式番号」
ボタン電池の表面には、形式番号が記載されていますが、これは日本乾電池工業会で統一された記号になっており、下記のような意味があります。
- 例:SR1120SW
- 1文字目は電池の種類です。
- S=酸化銀電池、M=水銀電池、C=リチウムマンガン電池、P=空気電池、L=アルカリマンガン電池
- 2文字目は形状を表します。
- R=丸型
- 数字は外形と厚みを示します。
- 11:外径サイズ〈単位mm、但し小数点以下切り捨てで表示〉
- 20:厚み〈単位mm、小数点以下1桁まで表示〉
- その後の記号は電解液の種類です。
- S=NaOH〈水酸化ナトリウム〉、なし=KOH〈水酸化カリウム〉またはその他
- 20:厚み〈単位mm、小数点以下1桁まで表示〉
- 末尾の記号は用途です。
- W=ウォッチ用
なお、統一基準が出来る前に流通していた電池については、この表示と異なったものがあります。
例としては、SR41W《外径7.38mm、厚み3.63mm》や、SR44SW《外径11.60mm、厚み5.60mm》等が挙げられます。他には、ソーラウォッチ用の二次電池《XR系》も数字の標記が少し違います。
また、輸入時計の多くに使われている海外のメーカー品は特に統一された記号は使用しておらず、個々の形式番号が標記されています。
ちなみに、環境汚染の問題から水銀電池《定格電圧1.35V》は生産を終了していますが、テンプ式電池時計や音叉時計には水銀電池が使用されているために、止む終えず電圧が異なる酸化銀電池《定格電圧1.55V》で代用しています。
補聴器用電池も昔は水銀電池でしたが、今は空気電池が一般的です。《定格電圧1.4V》
空気電池は特性が水銀電池とは違いますし、完全密閉構造には出来ないので、ウォッチ用としては使用されていません。
現在、ウォッチ用として使用されている酸化銀電池の種類は45種類+α、これにリチウム電池が15種類+α、という数字ですから如何に多いかがお判り頂けますでしょうか?
電池というと、特殊な取り付け方をしてある時計もあって、記憶しているものでは、シチズンが昔発売していた機種では、(-)極にリード線が溶接してある物がありました。実は、電池交換にまつわる話は色々あるのですが、それはまた別項で紹介したいと思います。
時計の革バンドの値段の差は?
革バンドの価格差は、仕立ての方法や素材の価格によって決まってきます。
一般的なバンドは、表面から「表革」「芯」「フィルム」「裏革」という構成になっていますが、一番仕立てが丁寧なのが「へり返しタイプ」と呼ばれるもので、表革の縁の部分が芯を巻くように折り曲げてあり、その上を裏革でふたをしたようになっているものです。
逆に、裏革の方の縁を巻いた感じになっているのを「フランスタイプ」と言います。また、表革の縁を折り曲げただけの感じのものを「半ヘリタイプ」と言い、単純に型で打ち抜いたものを「切身タイプ」と言います。
切身タイプでも、側面をそのままにしてあるのものと、剥がれてこないように塗り固めたような状態になっているものもあります。
この他、革の仕上げ加工(ステッチ入りや表面加工など)、遊革(輪になっている部分です)の形態によってもコストが変わってきます。遊革で言うと、1本フリー<1本固定<2本(1本固定,1本フリー)の順です。
また、原革の種類では、オーストリッチ・ワニ>トカゲ>バイソン>ヤギ>ウシ>ブタ、という順番でしょうか。
ただ、素材の中でも極上の部分しか使わないものは高価ですし、端の部分まで使えば材料費が下がりますから、この辺の歩留まりも価格に影響します。
とまあ、一般的な革バンドはこうやって価格が決まってきますが、もう一つメーカー専用バンドというのがあります。同じワニの革バンドでも、数万円もするメーカーバンドがありますが、これは素材の取り方(歩留まり)による違い以上に、メーカーとしてのコストが反映されているようです。
革バンドも最近は機能性を持たせた商品が出てきており、防水加工や防臭・抗菌加工のもならず、遠赤外線効果やマイナス・イオン効果を持たせるような素材を使った商品も発売されています。
また、革バンドは特注で色々なサイズや形で製作する事ができますから、個性を主張したい時には、バンドのデザインで遊んでみるのも良いでしょう。
コピー商品いろいろ
海外土産などで見かけるコピー商品ですが、一口にコピーと言っても次のように分類出来ると思います。
- (a) 本物と同じデザインの物
- 1. 本物の製品の一部を改造した物
- 2. 本物の製品の一部と模造部品を組み合わせた物
- 3. 模造された部品だけで作られた物
- 2. 本物の製品の一部と模造部品を組み合わせた物
- (b) 本物には無いデザインにブランド名だけを付けた物
典型的なコピー商品というと、時計ではロレックスが圧倒的に多いですが、いずれのパターンも見受けます。
- (a)-1
- 文字板やベゼル部分にダイヤを埋め込だ物です。元の製品価格が高いために、あまり見かける事はありません。
- (a)-2
- 比較的多く、次のようなパターンがあります。
- ・ベゼル部分だけ模造品に取り替えた物。
- ・機械だけ本物で、ケースを模造品(主に金ケース)に取り替えた物。
- ・機械とケース本体は本物で、バンドだけ模造品に取り替えた物。
- 細部まで綺麗に模造されていると判りにくいパターンですが、模造品の材質は劣る事が殆どで、バンドは痛みが早いので判りやすいですが、ベゼルやケースは修理に出して初めて気がつくという事例が多いようです。
- 本物と模造品の価格差で、密造グループは稼ぐ訳ですが、ひとつの本物から部分部分を使ったいくつものコピーが作られているようです。
- ・ベゼル部分だけ模造品に取り替えた物。
- (a)-3
- 昔は海外で格安商品を掴まされた場合によく見かけましたが、最近は最初からコピーと断って売る場合がほとんどで、これは購入側のモラルが 問われる部分です。(b)も同様ですが。
コピー商品は海外の有名ブランドだけでなく、東南アジアでは日本のメーカーのコピー商品も多く出回っており、セイコーのコピーも見た事があります。
コピー商品は、日本でも一時期パロティ商品と銘打って堂々と売られた時期がありましたが、外観さえ良ければ偽物でも構わないという感覚は、そろそろ脱却したいと思いますが、どうでしょう?
「正規代理店」って何?
宣伝などでよく見かけるこの言葉、小売店の場合には、消費者に対して信用をアップする意味で使われている事があります。
正確には、販売店契約を交わした「正規販売店」という表現が正しいのですが、別に特別な販売店契約を結ばなくても販売できるブランドにも、このような表現が使われている事があります。
この代理店契約がしっかりしているのは海外の有名ブランドに多く、例えばカルチェなどは、国内代理店を通さないルートで、厳格な販売店契約を結ばなくては取り扱いが出来ませんから、こういう場合には「正規」という表現は正しいでしょう。
ブランドによっては並行輸入品やお土産で持ち込まれた物も多く見かけますが、一番問題になるのは日本で正規に販売されていないモデルで、例えば外装部品が入手出来なかったり、商品購入価格に比べて割高だったりする場合があります。
メーカーによっては正規品と平行品の間で格差をつけていない所もありますが、販売の時にはリスクの面は説明していない事が多いようです。
まあ、看板に惑わされる事がないように気をつけたいですね。
「セイコー逆輸入時計の見分け方」
以前からありますが、「SEIKO」や「CITIZEN」などの製品で、輸出用モデルが逆輸入され、割安な感じで販売されている事があります。
先日、新聞で見かけた逆輸入の「SEIKO」ウォッチの通販広告では、希少品のようなうたい文句が載っていて、思わず笑っちゃいましたが。
逆輸入モデルでも、国内生産で海外向けデザインが逆輸入される場合と、海外の工場で作られている現地仕様の時計と二つのパターンがありますが、「SEIKO」の場合には国内では「ALBA」ブランドで販売しているような安価なモデルでも、海外では「SEIKO」ブランドになっている場合がありますから、「SEIKO」ブランドだから高級とは限りません。
海外向け商品は、曜日表示がある場合には日本語が入っていないので分かりやすいですが、それ以外には機械番号が違っている事があります。
「SEIKO」の時計形式番号は、裏ブタに「4桁+4桁」の数字、例えば「5M42-5000」などと標記されていますが、この番号が「V」で始まっている場合は殆どが海外仕様品です。多軸モデルの一部で「V」で始まりながら国内販売モデルというのもあるのですが、普通は「V」で始まる番号は、国内ではALBAブランドで販売されているか、ライセンス・ブランド商品で使用されています。
後は、文字板の「SEIKO」マークの下に羽根のような独特のマークが入っているモデルもあります。
逆輸入品で問題になるのは外装部品で、専用バンドしか入らないものは入手出来ない事もあります。また、安価に販売する(出来る)目的で入ってくる商品は、それなりの作りのケースやバンドでしかありません。
まあ、そういう時計と思って、割り切って使われれば何も問題ないかも知れませんが、こんなのが普通のSEIKOだと思われると困りますね。
でも一番問題なのは、海外でこういう商品を販売している「SEIKO」なんでしょうけど。
「ポイントメガネのネジ部分」
レンズの周りに枠がなく、レンズをネジで留めているタイプのメガネを掛けてみえる方、ちょっとそのネジ留め部分を見てください。
ネジの先がナットから出ているようでしたら、あまり安全な状態ではありません。先をカバーするような袋ナットを是非お近くの眼鏡店で付けてもらって下さい。緩み留めにもなりますし、安全性も高まります。
店でお客様のメガネを多数拝見していますが、ネジの先が出っぱなしのままで掛けていらっしゃる方をまだまだ見かけます。
良心的なお店でしたら、製作時に袋ナットは必ず付いている筈です。
話が外れますが、ポイントのメガネの製作は眼鏡店の腕の見せどころで、技術の優劣がはっきり出ます。最も、ネジで留めていないタイプの縁無しメガネ は普通はメーカーで製作しますからちょっと違ってきますが。